『放課後倶楽部』の活動日記

放課後の語り場。部員募集中。

ドラゴンボールは、青春よりも強い

僕にとってドラゴンボールは、青春よりも強い。
なんだかんだ言って人は、初恋の人よりも、母親の方が好きなように。

思い起こせば、幼少期の思い出は常にドラゴンボールと共にあった。

幼稚園の頃に見た、ブルマがショートパンツをはいてポーズをとっているコミックスの表紙のイラストは、中学生の時に初めて見たエロ本より強烈だった。

近所の友だちがもっていた、スーパーサイヤ人キラカードは、美術の教科書に載っていたゴッホの星月夜よりも強烈だった。

学生時代に彼女と恋愛映画を見た時は、感極まって涙を流したが、父に連れられて東映ドラゴンボールの映画を見た時は、興奮し過ぎてしょんべんをちびってしまった。

中学生の時、2学年下の不良に絡まれビビッて声も出せなかった時は悔しくて泣いたが、Z戦士たちがセルの産み落としたセルジュニアにやられていく様を見た後は、気分の悪さにうなされて夜中に熱を出してしまった。

高校の授業で物理を習っても、飛行機が墜落する瞬間、翼を蹴ってジャンプすれば普通に着地できるのではないかと本気で考えていて笑われたのは、タオパイパイがへし折った柱に飛び乗って飛んでいく映像が脳裏に焼き付いて離れなかったからではないだろうか。

だから、僕にとってドラゴンボールは最高、いや、最強なんだ。

ありがとうございました!
そして、さようなら、鳥山明先生!
天国に行った時、また、新作を見せてください。
楽しみにしています!

 

悟空とハムルン

 

絵本作家やまさきまひろの闘争 〜焼肉きんぐで食べ放題やりたい放題の巻〜

「おめえそれでも雄か!! 

ナニついちょんやろがよ、おおぉん!?」

にんにくと芋焼酎の臭いが混じった息を吐きかけながら、まひろは若い男性編集者のいちもつをテーブルの下からトングで思いきり捻り上げた。

「ちょっとまひろさん、痛いです!やめて下さいよ、こんな所で!」

土曜日の昼下り、たくさんの子連れ客で賑わう焼肉きんぐの一角で思わず悲痛な声が上がる。

隣のテーブルに座っていた子どもがびっくりしてまひろ達の方を見ると、まひろは真っ赤に漬け込まれたカルビの一枚肉の様な舌を突き出してアッカンベーをして見せた。

カルビの脂身によく似た白い苔が酒にただれた舌にこびりついていて、もはや妖怪の領域に達していた。

子どもの母親はサッとわが子の目を覆い伏せるとこちらに頭を下げた。

 

「どこに子どもを恐怖で固まらせる絵本作家がいるんですか!? もうちょっと自覚を持って下さいよ!」

月刊ぴよこクラブの担当編集者として、柳井はすがるような顔でお願いした。

「この前だって飲み過ぎて、こうなったらもう全面戦争やとか喚き散らして、ピューロランドの社員さん達相手にやらかしたでしょ。優しそうな女性の館長さんにヘッドロックまで決めて。あの後僕謝罪に行って大変だったんですからね。」

まひろは黙ったまま、もくもくと肉を蒸している。

これは誤字ではない。

まひろは焼肉に行くと、大量のキャベツで肉を包み込み、東南アジアの部族がキャッサバを料理する様に蒸し焼きにして食すのだ。

彼女によれば、古代狩猟民族のパトスを最も感じられるのがこのスタイルであるということだった。

 

「だって、おしり探偵とか人気やけ、いけると思ったんやもん。」

一転して今度は甘ったるいくぐもった声で、まひろが不満を漏らした。

四十路になり更年期障害を抱えても、彼女の中には永遠の少女が生き続けているのだ。

「いやいや、子ども向けの春画の絵本なんて無理に決まってるでしょ。しかもサンリオのキャラクターで。絶対許可降りないですから。」

柳井は烏龍茶の入ったグラスを手にため息をついた。

まひろは、まだ釈然としていない様子だった。

そこに、きんぐの男性店員が近づいてきた。

「あの、お客様すいません。もう少し小さな声でお話しいただけますでしょうか。周りのお客様が迷惑していらっしゃいますので。」

途端、酔ったまひろがブチギレた。

「なにおう、常連客に向かって偉そうな口聞きやがって!」

「まひろさんやめて下さい!」

そう言って、柳井が後ろからまひろを羽交締めにして止めにかかったが、なにしろまひろはベンチプレス135kgを上げる猛者である。

アメリカのアニメに出てくるピンク色のユニコーンのタトゥーが入ったまひろの太い前腕が、文化系の柳井の細腕を弾き飛ばす。

「てめえいつも言っとるのに、またこんなに山盛りのサラダ持ってきやがって、これで腹膨らまさせて、肉食えんようにする作戦やろがい!」

関係のないクレームを叫んで、まひろが店員の胸ぐらを掴む。

その時、後ろのテーブルから大きな声がした。

「おいオバハン!みんな迷惑してるから出て行けよ!」

長髪巨漢をした相撲部屋の若力士達であった。

「いやん、私好みのいい男達じゃないの!」

まひろはまた急に乙女にもどった。

彼女はデブ専だったのだ。

「ふざけんな、気持ちわりいんだよオバハンがー!」

怒声をあげながら若力士達が突進してくる。

まひろは、絵本に出てくる魔法使いの杖の様に血肉のついたトングをひらりひらりと振り回すと、あっという間に若力士達をのめしてしまった。

彼女はかつてロシア軍のブートキャンプに参加し、伝統的身体武術システマを体得していたのだ。

 

「さ、こんなところで油売っていられない。早いとこウチに帰って続きを描き上げなくちゃ。帰るわよ柳井。」

まひろはそう言いながら、持ってきたタッパーに生肉をぎゅうぎゅうに詰め込み始めた。

「いや、こんなことしちゃってまずいですよ、まひろさん。それに肉食え肉食えいうばかりで、打ち合わせなんか全然進まなかったじゃないですか。」

尻餅をついたまま泣き言をいう柳井を振り返ると、まひろはナムルの挟まった黄ばんだ歯を剥き出して笑って言った。

「よし、じゃあラウンドワン行ってから話聞くわ。なんか久々にフットサルしたい気分やねん。付き合えや。」

柳井はむせ返るような臭いに思わず鼻をつまみながら、

「わかりましたよ。もうどこまでもついて行きますよ。その代わり、また飛び切りの傑作描いて下さいね!!」

と、白い歯に韓国海苔をへばりつかせたまま、まひろに負けないくらいの大きな笑顔を浮かべて返事をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある年配福祉職員との出会いと別れ

自分は精神科に通院しながら、障がい者向けの就労支援事業所で作業をしている。

今日、いつも通りの終礼の時、80歳を超えた管理職をしている職員から「今日をもって退職します。」という挨拶があった。

 

福祉一筋に60年やってきた、その人の最後の言葉は意外な程あっさりとしたものだった。

「みなさん、無理をすることなく一つ一つ取り組んでいって下さい。私は、〇〇(地元)の空からみなさんのことを見守ってますのでね。」

正確には記憶してないが、こんな感じで短くて簡単な言葉だった。

自分は2年くらいしかその事業所で一緒の期間がなかったのだが、その人の雑談の中で「昔の障がい者福祉は今とは全然違った。精神障がい者なんか鎖でくくりつけとけとか平気で言う人がいた時代もあった。」という話も聞こえてきたことがあった。

戦後そんなに時代も経ってない頃から今まで、まだ福祉が十分に成り立っていない中でずっとやってきた人だ。色々見てきたはずだし、相当の苦労もあったに違いない。

それで、最後の言葉が、先の10秒もない挨拶である。

自分はあまりにあっさりとしたものだったので、リアルタイムでは気にも止めず、自分も帰り際に挨拶をして、励ましの言葉をもらって帰るのみだった。

でも、後で考えてみて、あの言葉こそが、60年福祉をやってきたその人の最後の境地だったのではないかと思う。

その人はまだ元気だが、自分が死んだ後のことも考えていた。

「空からみんなを見守っている」と。

自分は精神科に通院してから、認知行動療法森田療法、疾患に関わる本や心理学や哲学、宗教の本も色々読んできた。

素晴らしいものもたくさんあった。

でも、例えば、そういったものは知的障がいがあったり病状が酷ければ、本を読み通したり、理解することは難しいと思う。

最先端の科学的な医療や宗教に抵抗のある人もいるだろう。

でも、その人が空から見守っているというイメージは、自分や、同じ事業所にいる知的障がいをもった人にも思い浮かべることができるはずだ。

簡単で誰にでもわかるけど、だからこそ、どんな心理療法や哲学者の論理にも負けない強力さが、その言葉にはあった。

その人は、普段から特別なことは何もしなかった。泰然自若というのか、達観しているのだろうが特別わかっているという感じも出さず普通のおばあちゃんといった様子だった。

でも年配者特有の度量の広い雰囲気があって、信頼感があった。

この人に空から見守られていたら、不安な中でも、なんだか勇気がもてそうな感じがあった。

福祉職員として、自分なりに精一杯にやってきたという自負がなければ、あの言葉は言えなかったはずだとも思う。

 

自分はあまりこんな人になりたいと思うことはない。

でもその人のことはすごいと思った。

空を眺めて、安心するなり、なんなら、おかしくて笑ってしまうのでもいい。

そんな、自分が死んだ後でも、人をポジティブな気持ちにさせることができるような人間になりたいと思った。

 

青空


 

月夜のアコーディオン【短編小説】

月灯りのふんわりと輝く夜
冬の終わりをつげるような
仄かな温風がガラス戸のすき間から部屋に流れこんできた。
煎餅布団の上にひとり横ばいになっていた男は、なまめかしい月の吐息に頬をさらされて、めずらしく、ふいに人恋しい気持ちになった。
「町に出てみようか」
本棚の上に放り置かれた、古い小倉織のコインケースを手に取って開けて見ると、中には百二十六円きりしか入っていなかった。
男は押し入れを開けて、くたびれたアコーディオンをひっぱり出すと、
木造アパートのペンキの剥がれ落ちた階段をカツンカツンと急ぎ足で駆け降りていった。
アパートの窓々からは、頭上に浮かぶ月灯りもよそに、まばゆい光がこぼれ出していた。
「ニッポン、ニッポン」「USA、USA」
スポーツの実況中継か、はたまた近頃、飛び火するように広まりはじめた防衛戦争とやらの実況中継か、判然とはしないけたたましい音が漏れ聞こえてきた。
また、30代(たぶん)の独身女性が住んでいる下の階からは、宇多田ヒカルの歌がもっと大きな音で鳴り響いていた。
「女ってのは本当に宇多田ヒカルが好きだよなぁ」
背中ごしにそんなことを思いながら男は、女は戦争を嫌い平和を望みながらも、武器を手に戦場で血を流さない理由を知ったような気がした。

夜でも町は黒山の人だかりだった。
開催を危ぶまれさえした大阪万博の歴史的な活況のせいだ。
目玉はJAXAが月の鉱物を採取しようとして偶然発見した「月のウサギのフン」だ。
初めてカメラが月のウサギの姿を捉えた時、巨大モニターの前に座っていた研究員たちは、全員がかつて青春を捧げた高専ロボットコンテスト以来のような興奮状態に包み込まれた。
UFOキャッチャーのようなロボットアームがガチャガチャとうねるのを器用によけながら、ウサギたちはクレーターの縁の掘られた巣穴に入ったまま出てこなくなった。
アメリカ人の学者が言うには、おそらく冬眠状態に入ってしまって、次出てくるのは2600年くらい先だという。

日本経済は回復したと言われながらも、急激な物価高騰はとどまるところを知らず、まだ若い者たちまでも路上で暮らす様相を呈していた。
人々は先行きの見えない不穏な世の中で、何とか人生を謳歌しようと必死だった。
「お月見団子はいらんかね」
「保護ウサギのカフェはこちらだよ」
男は喧騒の波間を縫うようにして歩きながら、少し離れた道端にたどり着いた。
路上では、学生服に丸い黒縁眼鏡をかけた男が絵を売っていた。
見ると油絵で描かれた雀の絵ばかりが並べられている。
ミミズをついばんでいるのやら電線に並んでとまっているのやら。
「今ならウサギの方が売れるでしょう」
烟草にマッチで火をつけながら声をかけると、学生帽のつばをつまんでむすとした声で「僕は雀しかやらんです」と答えた。
男は学生の顔つきを見て、いつの日か見た無言館の自画像を思い出した。
それから何も言わず隣に座ってアコーディオンを弾く準備をはじめた。
お互いに人と言葉を交わしたのが久しぶりだったから、変に気遣わしさを感じることもなかった。

いくど目かの恋
形を変えて繰り返される運命の恋
月夜の晩の帰り道 君の横顔を見ている時
僕の耳元に鏡でよく見た道化師が、
揶揄うように囁いた。
ニセモノなんかじゃない
そう言い返したけど
ホントウは、僕の瞳の奥に映るのは
君の笑顔じゃなく
僕自身の幼い泣き顔だったのかもしれない。
だからまた満たされることもなく、アルバムの中で色褪せていく
顔も思い出せなくなるくらいに。

60年代のフォークに影響を受けたオリジナルソングが悲しそうに響いた。
人々は足を止めることもなく、歌は雑踏にかき消されてた。
気づいた時には、隣の画学生も居なくなっていた。
置き手紙があった。
「憐れみの屈辱よりも傷つくことの恐れの方が、まだ美しく死ねると思います。僕は物乞いにはなりたくありません」

夜店で売られていたカップ酒に抗精神薬を溶かしたのをひと息に呑み干した。
紫の月が嗤っている。
夢現の中で、十八番の山月記の歌を弾き鳴らしたはじめた。
歌いながら、考えた。
「李陵の奴は虎だったが、俺はウサギだったんだ。弱っちい白くてマシマロみたいな。
だから、臆病な自尊心と尊大な羞恥心みたいなカッコのいいやつじゃなかった。そんなに頭がいいのじゃなくて、もっと普通の、最近よくある思春期をこじらせたプライドみたいなやつだった。
それで働くのが恐かっただけなんだ。」

突然、雑踏の中から顔を突き出した犬がワンッと吠えた。
僕はびくっとして目を覚ますと、慌ててアコーディオンを持ち直した。
そして、リクエストに応えるようにして「犬のおまわりさん」を演奏しはじめた。


月夜のアコーディオン

 

 

東京、プラトニックな夜【短編小説】

それは、奇妙な夜だった。

夜空の星さえ飲みこむ眩い光で

白い雲と黄色い月とが

くっきりと浮かび上がる

東京のまちで、

二人の処女と童貞が

マッチの灯し火を手に

肩を寄せあっているような

プラトニックな夜だった。

 

二人は、純粋に文学によってのみ惹かれ合った。

そして、母と胎児が血と尿さえ分かち合うように、

混じり気のない魂をひとつ、ひしと抱いて、結ばれていた。

 

二人の出会いは、小説の投稿サイトだった。

『プルーン畑でつかまえて 作:中井貴一

清彦が、半ばふざけて書いた二次創作作品を

文子が、おもしろいとコメントしてくれたのがはじまりだった。

 

清彦は、小説の専門学校に通っていた。

精神科に通院しながら障碍者の作業所で働いて貯めた工賃と、

両親が自分たちの死後のためにと貯めてくれていた分とを合わせて、

なんとか入学金を支払うことができた。

「俺ももう37歳、これが最後のチャンスやけん」

そう言って、涙を流す母親に別れを告げて、九州の田舎から上京してきた。

 

文子は、東京に代々続く医家の元に生まれた。

しかし本人は、ピアニストである母親の血を濃くひいたのか、東京大学の文学部へと進むこととなった。

 

二人が好きな文豪が心中事件を起こしたという小さな池の近くに、

六畳一間のアパートを借りて同棲を始めた。

抑うつ感を訴えて、布団に潜り込みがちだった清彦のために、

文子は、よくミルク粥を煮て食べさせた。

清彦は、台所に立って菜箸を繰っている文子の優しさを思いながら、

彼女に喜んでもらいたい一心で、言葉を綴った。

「僕たち、まるで宮沢賢治と妹のトシのようだね」

清彦が冗談を言うと、文子は口元に白い指を当ててコロコロと笑った。

清彦はその顔に見蕩れながら、東京に初めて来た夜に見上げた「半月にたなびく白い雲」を思い浮かべた。

 

また、東京の夜が深まっていく。

そして、二人の蜜月は、

さっき通りで見かけた露天商が

地震の備えにいかがですか」

と売りつけてきた、消えないマッチの灯し火ように、いつまでも続いた。

 

 

 

太宰府天満宮、見物の記

福岡にある太宰府天満宮へ行ってきた。

学問の神様、菅原道真公を祀る神社だけあって、それらしきものも多くあって面白かった。

 

f:id:nezuminokifujin:20240225142827j:image

門のそばにある、ご牛様も受験生の様に鉢巻を巻いている。

これはご利益がありそうだ。

 

f:id:nezuminokifujin:20240225143008j:image

神主の卵と思われる人物が、魚を献上しに行っている。やはり魚にはDHAがたっぷりと含まれていると言うし、喜ばれるのか。

 

f:id:nezuminokifujin:20240225143143j:image

一際目立つ人物を発見。

道真公の化身かと思いきや、ただの(と言っちゃ失礼だが)見せ物師のおっちゃんでした。

 

しっかりお参りしてきたので、少しは賢くなればいいのだが。

それでは最後にきれいに咲いていた梅の花を一枚。(まあ自分は梅ヶ枝餅の方にばかり気を取られていたわけですが笑)

f:id:nezuminokifujin:20240225143614j:image

ぼんやりと、いる -精神科デイケアの日常-

机の上の白湯からわき立つ湯気のように

ただぼんやりと座っている

 

楽しげに雑談に花を咲かせる人もいれば

難しい顔をしてサウナでじっと耐え忍んでいるおじさんのような顔つきをした人もいる

 

外では自動車が行き交う音がする

学校のチャイムが聞こえる

「世間ではみんな忙しく生活しているんだ。

それに引き換え、こちらは白湯を呑み呑みトイレに立つばかり」

 

あまりにすることがないと

禅の修行僧のようにふつふつ邪心が湧いてくる

「何のためにここにいるのか、

何か試されているのか」

イライラしてはいけないと、昨日久しぶりに再会した、野良猫のことを考えるようにした。

一頃前、よくウチに来て餌をあげていた野良猫が水たまりで水を飲んでいたのを見かけたのだ。

こちらは、太宰治の『津軽』にあったような太宰と乳母の感動の再会のような心持ちだった。

「心配させやがって、生きていたのか」

猫はこちらをしばし見つめると、覚えていないといった風に、ぷいと顔を背けて行ってしまった。

余計なことを思い出したと、またイライラした。

時計を見るとまだ1時間もある。

 

口にすると、白湯はとうに冷え切っていた。