『放課後倶楽部』の活動日記

放課後の語り場。部員募集中。

2024-02-01から1ヶ月間の記事一覧

ある年配福祉職員との出会いと別れ

自分は精神科に通院しながら、障がい者向けの就労支援事業所で作業をしている。 今日、いつも通りの終礼の時、80歳を超えた管理職をしている職員から「今日をもって退職します。」という挨拶があった。 福祉一筋に60年やってきた、その人の最後の言葉は意外…

月夜のアコーディオン【短編小説】

月灯りのふんわりと輝く夜冬の終わりをつげるような仄かな温風がガラス戸のすき間から部屋に流れこんできた。煎餅布団の上にひとり横ばいになっていた男は、なまめかしい月の吐息に頬をさらされて、めずらしく、ふいに人恋しい気持ちになった。「町に出てみ…

東京、プラトニックな夜【短編小説】

それは、奇妙な夜だった。 夜空の星さえ飲みこむ眩い光で 白い雲と黄色い月とが くっきりと浮かび上がる 東京のまちで、 二人の処女と童貞が マッチの灯し火を手に 肩を寄せあっているような プラトニックな夜だった。 二人は、純粋に文学によってのみ惹かれ…

太宰府天満宮、見物の記

福岡にある太宰府天満宮へ行ってきた。 学問の神様、菅原道真公を祀る神社だけあって、それらしきものも多くあって面白かった。 門のそばにある、ご牛様も受験生の様に鉢巻を巻いている。 これはご利益がありそうだ。 神主の卵と思われる人物が、魚を献上し…

ぼんやりと、いる -精神科デイケアの日常-

机の上の白湯からわき立つ湯気のように ただぼんやりと座っている 楽しげに雑談に花を咲かせる人もいれば 難しい顔をしてサウナでじっと耐え忍んでいるおじさんのような顔つきをした人もいる 外では自動車が行き交う音がする 学校のチャイムが聞こえる 「世…

精神科デイケアで始まった恋たち

僕は、主治医に提案され病院併設の精神科デイケアに通うことになった。 最初の利用説明で女性スタッフから、メンバー同士の連絡先交換や施設外の交流は禁止である事を伝えられた。 もちろん、症状の好転があればいいと思って利用することにしたのだが、半分…

人間と競争と愛と

人間は不完全な生き物である。人間は不完全だから人を傷つけてしまう。人間は不完全だから面白い。傷つくことは面白くない。傷つけあうことで優劣を競ってしまうのか。優劣のない世界は、面白いのか面白くないのか。人間は誰も劣位である事を好まない。優劣…

笑顔が元凶

あの精神科デイケアのスタッフはとびきりの笑顔をしている 心の弱った男性利用者はみんなその笑顔に癒され励まされ魅了されている そのスタッフは自分の笑顔に自信をもっている 笑顔で、苦しみ、弱った利用者の居場所を作れるよう笑顔を絶やさない 可愛らし…