月灯りのふんわりと輝く夜冬の終わりをつげるような仄かな温風がガラス戸のすき間から部屋に流れこんできた。煎餅布団の上にひとり横ばいになっていた男は、なまめかしい月の吐息に頬をさらされて、めずらしく、ふいに人恋しい気持ちになった。「町に出てみ…
それは、奇妙な夜だった。 夜空の星さえ飲みこむ眩い光で 白い雲と黄色い月とが くっきりと浮かび上がる 東京のまちで、 二人の処女と童貞が マッチの灯し火を手に 肩を寄せあっているような プラトニックな夜だった。 二人は、純粋に文学によってのみ惹かれ…
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